第12回技術ワーキンググループ会合レポート

会合の模様

2019年1月30日(水)に、第12回技術ワーキンググループ会合が開催されました。その模様を紹介します。

アジェンダ

NIDD についてご紹介
ソフトバンク株式会社 花岡 博和 氏氏
IoT を中心としたデジタルトランスフォーメーションが変える 未来の働き方
株式会社神戸デジタル・ラボ 村岡 正和 氏
低遅延ストリーミング Live Multi Viewing とデバイス WebAPI
株式会社TBSテレビ 藤本 剛 氏

NIDD についてご紹介

ソフトバンク株式会社 花岡 博和 氏より、NB-IoT の特徴、そして、IP アドレスを使わない NIDD (Non-IP Data Delivery) について解説いただきました。

NB-IoT は、LPWA (Low Power Wide Area) の通信方式の一つです。無線免許が必要な無線通信のため、主に携帯電話事業などがサービスを提供します。NB-IoT は、少量のデータの送受信にフォーカスし、デバイスの簡素化や低コスト化を目的とした仕様です。扱うデータが少ないため、LTE の電波の狭帯域な隙間を使うことが可能とりました。

eDRX や PSM (省電力モード) により、スリープ状態を作り出すことで省電力化を実現しています。一方、スリープの時間が長いと、その間は着信ができないため、省電力化と利便性はトレードオフとなります。

NB-IoT では、スマートフォンで使われる LTE と同様に、IP アドレスが端末に付与されるモードに加え、端末に IP アドレスを付与しないモードも用意されています。それが NIDD です。NIDD には SGi と SCEF と呼ばれる 2 つの方式があります。

SGi は、移動体網の中でデバイスと IP アドレスを関連付けることで、アプリケーションサーバーから IP アドレスでデバイスにアクセスできようにします。一方、SCEF はデバイスと IP アドレスの関連付けを行わず、アプリケーションサーバーに対して NB-IoT 通信事業者が RESTful API (HTTPベース) を提供します。デバイスの識別は External-ID と呼ばれる識別子を使います。

ソフトバンク社が現在サービス提供しているのは SCEF 方式の NIDD です。現在はまだ RESTful API は一般に提供されていないが、前向きに検討中です。

[PDF ダウンロード]

IoT を中心としたデジタルトランスフォーメーションが変える 未来の働き方

株式会社神戸デジタル・ラボ 村岡 正和 氏より、同社がこれまで取り組んできた IoT 事例から得られた経験を通して、デジタルトランスフォーメーションによって変わる働き方について語っていただきました。

同社では IoT 事業に AI を活用した事例を数多く取り組んでいます。他社に先駆けて、トレイの空き室状況をモニタリングするシステムを開発しました。日本のメディアだけでなく海外のメディアからも取り上げられ、多くの引き合いがありました。その後、取得したデータを AI で分析することで、消耗品の交換頻度の予測、しいては、清掃員人員不足の解消、物品の過剰在庫の最適化などに役立てられることが分かりました。その経験から、同社ではあらゆるセンサー情報をクラウドに蓄積するサービスを開始しました。その後、見守りなどのサービスなどに活用されています。

近年では IoT や AI に関して様々な概念実証が行われていますが、その成果をビジネスにつなげられないことが課題です。村岡氏は、当事者が PoC 開発そのものを外注に丸投げしていることも大きな原因の一つと考えており、PoC の内製化を強く推奨しています。同社では AI ディープラーニングハンズオンセミナーを開催し、PoC に取り組みたい企業に対し、プログラミングも含めて指導しています。そのほか、同社は IoT、AI のみならず、xR (MR/VR/AR) にも関わっており、IoT と組み合わせて産業用のソリューション開発も行っています。

近年、デジタルトランスフォーメーションが話題になっていますが、ここに至るまでのレベルとして、Digitization (アナログ情報をデジタル化)、Digitalization (業務手続をデジタル化) があり、Digital Transformation とは、デジタル手続きを連携させ業務を自動化するレベルを指します。IoT と AI を融合し、それらをどのように価値の創出につなげられるかが鍵となります。

[PDF ダウンロード]

低遅延ストリーミング Live Multi Viewing とデバイス WebAPI

株式会社TBSテレビ 藤本 剛 氏より、Live Multi Viewing と Device WebAPI の活用についてご紹介いただきました。

Live Multi Viewing とは、複数の映像入力をサーバーを介して複数の端末に送る仕組みです。端末側ではすべての映像をリアルタイムに見ることはもちろん、一つの映像に切り替え表示することも可能です。

Live Mult Viewing の大きな特徴は、独自のストリーミング技術により、ローカルネットワークであれば超低遅延を実現し、映像切り替えも瞬時に行える点です。そのため、主に、コンサート会場、野球の球場、テニス会場、ボクシング会場などで、観客に対して映像を配信するなどのケースで使われます。観客は目で直接的に演奏や試合を見ながらも、好きな時にタブレットやスマートフォンで、複数の地点から流されるライブ映像を選んで観ることが可能になります。

一方で、同社では、スマートグラスを観客に提供し、Live Multi Viewing を楽しんでもらう取り組みも行いました。この取り組みでは、全観客は同じ映像を見ることになりますが、その映像切り替えはオペレーターが行います。観客側スマートグラスに映し出す映像を切り替える手段に Device WebAPI を活用しました。

そのほか、前述のロールネットワークではなく、LTE (4G) を通して、ゴルフ場といった広いエリアにまたがったリアルタイム映像中継も Live Multi Viewing を使って試されました。ゴルフ場ではスマートフォンをカメラとして使い、何人も別々の場所にいる選手に密着して撮影します。観客は、目の前にはいない選手の状況もリアルタイムに映像を切り替えて楽しむことができます。LTE を経由した配信でも Live Multi Viewing の真価が発揮されました。将来的には 5G ネットワークを利用することで、さらなる低遅延配信が期待されます。