第8回技術ワーキンググループ会合レポート
2017年10月27日(金)に、第8回技術ワーキンググループ会合が開催されました。その模様を紹介します。
アジェンダ
- 「楽器WoT」が拓く未来の演奏体験
- ヤマハ株式会社 多田 幸生 氏
- コミュニケーションロボットとスマートスピーカーの今と未来
- ロボットスタート株式会社 北構 武憲 氏
- デバイスWebAPI実装のアップデートと利用事例について
- 株式会社NTTドコモ 山添 隆文 氏
- ドコモAIエージェントにおけるデバイスWebAPIの活用とサポートプログラムについて
- 株式会社NTTドコモ 吉川 貴 氏
「楽器WoT」が拓く未来の演奏体験
ヤマハ株式会社 多田 幸生 氏より、電子楽器に使われる MIDI 規格そして Web との融合について解説いただきました。
MIDI は電子楽器だけでなく、照明・花火の制御、通信カラオケ、ゲームなどにも使われてきました。また、ネットでのリアルタイム配信にも対応すべく、IETF では RTP-MIDI (RFC6295) が策定されました。
Web の標準化団体 W3C (World Wide Web Consortium) では Web MIDI API が策定されており、すでに Chrome に実装されています。つまり Web ブラウザーから MIDI 対応の電子楽器をコントロールすることが可能となります。また同じく W3C では Web Audio API が策定されており、ブラウザー上でシンセサイザーのようにオーディオを制御することも可能になっています。日本国内でも開発者コミュニティーが活発に活動しており、ハッカソンも行われています。
MIDI は MMA (MIDI Manufacturers Association) にて管理されていますが、日本においては AMEI (Association of Musical Electronics Industory) にて管理されています。しかし、MIDI 規格は策定からすでに 34 年も経過しており、現在は、次世代の MIDI 規格「Future MIDI」の議論が開始されています。
これまでは仕様が先でアプリケーションが最後というアプローチで規格が策定されてきましたが、近年は組み込み機器のオンラインアップデートも可能になったこともあり、ユースケースファーストになりつつあります。さまざまなアプリケーションやサービスを開発しつつ、並行して、実態に沿った形で仕様を策定していきます。
ヤマハ社では、ユースケースの提示、コミュニティーへの貢献、ビジョンの発信などを通して、「楽器」と「楽器以外のモノ」を融合した未来のプラットフォームや新しいビジネスモデルを模索し続けています。
コミュニケーションロボットとスマートスピーカーの今と未来
ロボットスタート株式会社 北構 武憲 氏より、近年話題になっているスマートスピーカーなどの業界事情について解説いただきました。
現在は、Pepper などのコミュニケーションロボットとスマートスピーカーにはそれぞれに特徴の違いはあるものの、今後はそれらの境界線が不明瞭になっていく可能性があると予想されます。
本講演では、スマートスピーカーの市場規模、実際に購入した顧客が何に使っているのか、といったスマートスピーカーの実績について紹介いただいたうえで、とりわけ米国ではスマートスピーカーがなぜ売れているのかについて分析を披露して頂きました。
日本では 10 月に LINE Clove WAVE と Google Home の販売が開始されたばかりですが、本講演の最後では、日本におけるスマートスピーカーの普及スピードと普及台数予測を披露いただきました。
デバイス WebAPI 実装のアップデートと利用事例について
株式会社NTTドコモ 山添 隆文 氏より、GitHub で公開しているデバイスコネクトの更新の報告と、デバイスコネクトの利用事例を紹介いただきました。
最新のデバイスコネクトでは、Android 版において、マネージャーとプラグインの間の処理遅延が低減されました。これは、Android O のバックグラウンド処理を使うことで実現しています。
また、Android 版では、DeviceConnect のプラグインとして、ADB (Android Debug Bridge) コマンドを Device Connect プロファイルとして提供する ADB プラグイン、そして、BLE の HOGP (HID over GATT Profile) を使ってマウスやキーボードを操作するための機能を提供する HOGP プラグインが新たに GitHub で公開されました。
デバイスコネクトの利用事例として、VR での活用が紹介された。コンソーシアム会員のクロスデバイス社との共同事業で VR プロモーションシステム「みんなのVR」を開発し、全国各地の自治体や企業で活用されています。
国立科学博物館では、VR 空間共有システムを使った「古代アンデス文明展 VR ウユニ塩湖」が公開されています。
また、TBS 社との事業提携として、東レ パンパシック オープンテニストーナメント 2017 にて、観客がスマートグラスを使ってテニスを鑑賞しながら様々な映像を閲覧することができるサービスを提供しました。
HMD 上に VR 映像を表示する仕組みや、リアルタイム映像を表示する仕組みにデバイスコネクトが活用されています。
ドコモ AI エージェントにおけるデバイス WebAPI の活用とサポートプログラムについて
株式会社NTTドコモ 吉川 貴 氏より、NTTドコモ社提供の AI エージェントとデバイス WebAPI を組み合わせた活用、および、そのサポートプログラムについて紹介いただきました。
AI エージェントは音声エージェントなどを使って家電操作 bot「家電くん」などを制御できるプラットフォームです。すでに開発者向けにトライアル環境がオープンされています。「家電くん」では、音声で Philips 社のスマート電球 Hue とラトックシステム社の赤外線リモコンを制御できます。
音声は「多目的対話エンジン Speak」が処理を行い、「家電くん」などのデバイス制御には「IoT アクセス制御エンジン Symphony」が処理を行います。Symphony からデバイスコネクトを組み込んだスマートフォンやホームゲートウェイを制御します。
NTTドコモ社では、これまで通りのオープンソースとしてのデバイスコネクトの無償の普及活動に加え、IoT ソリューションを扱う SI ベンダーやサービスプロバイダーに対して、Symphony およびデバイスコネクトの有償サポートプログラムを用意し、商品利用、配布、提供、品質保証をサポートしていく予定です。